下の写真が外観で、ご覧のように早速2πファンをデザインに取り入れています。プリアンプを作る時、どうしても私にはオモチャっぽく作ってしまうクセがあるので、こんな感じになります。
右側の黄色いトランスが電源用、白い方がヒーター用で、シールドケース入りに加えリーケージフラックスを下げるため余裕ある動作をさせますが、それでもMCカートリッジ用のトランスは内蔵せず別に設置します。
左側のパンチングメタルカバーの中に見えるのが、ケミコンを2階建てに組んだ基板のヤグラで、パワーアンプ並みの量となっています。
下に載せた電源回路図中、チョークコイルの前に小さな抵抗値によるフィルターを1段設けているのは、リップルバッファを構成しているためです。
整流直後にいきなりチョークコイルをつないでフィルターを構成してしまうと、リップル波形がキツイため、チョークコイルのリーケージフラックスが大量に発生します。
とはいえダイオード整流直後に大容量のコンデンサーをつなぐと、突入電流が大きくなってしまいます。そこでチョークコイルの直前にちょっとした抵抗と大容量のコンデンサーでCRフィルターを構成してやれば、突入電流を増やすことなくチョークコイルの負担をググッと減らせるのです。
リップルバッファはパワーアンプなどでも数十Ωの抵抗と、最近では簡単に入手できる大容量のケミコンで構成してやると、電源電圧もさほど低下せず、チョークコイルの浮遊容量でパスしてしまう高周波スパイクノイズなどの低減にも役立つのでオススメです。
下が入出力特性です。20KHzにおいて規定値の4倍である200mV入力で1%、10倍である500mVでも2%の歪に収まっています。またこの時の出力電圧はそれぞれ3,7Vおよび8,9Vになっていて、充分なダイナミックレンジがあるとわかります。
なにしろ出力端子にあってはこの程度の電圧値ですが、減衰させる前はピークで150Vという845シングルすらドライブ出来る電圧になっているのですから。
20KHzと1KHzではそれぞれ定格50mV、5mV入力時に0,85Vの出力が出せ、RIAA偏差も含めほぼ設計通りの値になりました。20Hzでは0,8Vと若干低下していますが、これはランブルフィルターとして、あえて段間コンデンサーの値を当初予定の0,22μFから0,068μFと少なめにしているためです。
ここまで強力なダイナミックレンジを持ったヘッドエンドでCR型EQプリアンプを作ったのは今回が初めてということもあり、どのような音が出てくるかレコードを聴くのが楽しみです。
ということで実際に針を落としてみると、出てきたのはいわゆるプロの音でした。つまりミックスダウンしている時のように、それぞれの楽器の素材を感じる音なのです。
特に中音から低域にかけての分離や奥行きの良さは、中音から高音域がそのあたりをマスキングせず、本来の倍音だけをしっかり表出しているせいでしょう。
このプリアンプは、ほとんどのゲインをたった一つの無帰還増幅素子だけで稼いでいます。そしてそのシンプルさと比類ないダイナミックレンジが教えてくれるのは、やはりレコードの情報量は多かったのだということです。
また当たり前のことですが、S/N は非常に優秀です。ヘッドエンドだけはNFBが通用しないので、真空管の優秀な部分がここぞとばかり花開いています。
シールドケースを取ってもS/N上OK
ですからカートリッジはあまり選びません。もちろんそれなりに音色の差はありますが、どんな安物のカートリッジでも、実はかなりの情報を拾っていたのに、微弱信号を発生する道具だとナメてかかっていたため、本質が見抜けなかったようです。
喩えて言うなら、「ロクでもないガキの集まりだと聞かされていた小学生のクラスが、担任が替わってマジに話してみたら、実はそれなりにがんばっているイイ子たちの集まりと分かった。」と言う感じでしょうか。ピアノの再生でカートリッジ選びに悩んでいる人はオススメです。
2πファンも非常に静かで、6時間くらい連続使用しても、シャーシはヒンヤリ(27℃)ですし、シールドケースをはずした状態で球の表面温度は38℃くらいです。こうした経緯から早速自分用にもこの方式のプリアンプを製作することにしました。
ただし自分用にはセレクターツマミなどが無くなる代わり、チョッと変わった機能のツマミが付く予定です。それに伴って外観もチョッと他に無いものになります。お楽しみに。
つづく 現行アンプの改造について
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